KIRYOKU.TAIRYOKU.CHIRYOKU
お久しぶりでございます。
暑い暑い夏の日。
皆様はいかがお過ごしですか。
最近ですね、デイサービスに通われる97歳の男性ご利用者様にお願いしていたことがありましてね。
その方は川越市で最高齢の現役釣竿職人さんです。
この方は本当に勤勉で穏やかで探究心のある人。私はいつもその方の生きる姿勢や学びの心に尊敬しかありません。
自らはあまりお話をされることはないのですが聞くと昔のことを色々教えてくれます。
その方は川越に来る前の若かりし頃、東京都の東大和市で暮らしていたとのことで、私もよく知る西武遊園地沿いの竹林に行かれては夜、人目を忍んで竹を取りに行ったことなど興味深い思い出を楽しそうに話して聞かせてくれました。
昭和初期の昔の事を教えてくださる方があと何十年かするといなくなる。その時は必ず訪れます。
私は今こうして貴重なお話を聞けていることに幸せとありがたみを感じるのです。
植物1つ、テーブルに置くにしても葉っぱの色や形をよく観察し、考察します。
物事を考えることに柔軟な気持ちが備わっているのがよくわかる人です。
そんなご利用者様に最近買ったお気に入りだったやちむんの器が真っ二つに割れたことを話したら『持ってきて?見てみよう』と提案してくれました。
つい最近、金継ぎの本を買ったよう。
普段、竹で釣竿を作る際に漆や金粉は使われるようで、金継ぎのやり方を新たに学ぶ為に本を買っていたようです。
私は『無理しないでくださいね』『直らなくてもよいので』と注意深く念押しをしながら割れた器を手渡しました。
なぜそんなに念押ししたかというとその方は両手が痺れたりして痛むことがあることを知っていたから。
お嫁様にも相談したところ
『いつまでも探究したい人なので、ボケませんね』なんて冗談混じえて答えくださり。
器を渡してから3ヶ月くらい経ったかな。
『金継ぎの部分で手間取っている。手が震えて真っ直ぐ細く描けないのだ』
ともらされました。
『私は本当に気にしないで好きなようにしてください』と言う。
『手が痛かったりしたらやめても大丈夫』と、思ってはいたが、、言わなかった。
1度受けてくださった職人さんに対してそれは逆に失礼かなと思ったからです。
それからしばらくして器を持ってきてくれたのですが見た瞬間、
『すごいなぁ〜』
本当ただただ素直に感動してしまいました。
最近はご高齢ということもあり、歩くこと食べることもやっと。といった様子が続いていた為、家でどれだけこの器に時間を割いてくれたのかと考えると涙腺が思わずゆるむ。
何年か前の七夕の短冊にお願い事を書く際にその方は何て書くんだろう。と私は考えていました。
『毎日をありがとう』
と書いていました。
『宝くじが当たりますように』
と書いた私の心が浄化されたのは言うまでもない。
気力・体力・智力
その方が大事にされている3つの力を私も引き続きサポートしていきたいです。